菊池仁志コラム 飛躍への原動力。世界に羽ばたくために。Vol.12

2019年08月24日

執筆者は自転車チームをゼロから全国大会連覇の強豪チームへと育て上げたコーチです。指導者として確かな力を持つ彼が、怪我をしたときなど、思うように自転車に乗れないときのワットバイクの使い方について語っています。


以下本文:

競輪選手として現役だったころ、レースでの転倒で怪我に苦しんだ時期が何度かあった。

プロとしての経験が浅く、若いときの怪我は、気持ちの焦りから痛みを我慢して無理やり自転車に乗るトレーニングをしていたように思う。

レース勘が落ちることを心配して、痛みがあっても早めにレースに復帰することもあったが、意外と走れていた。それが、連戦を重ねるにしたがって、何か身体が上手く動かない、思うような自転車の動きにならないなど、不調に陥るようになっていく。

後々よく考えてみると、怪我をするまでに順調だったトレーニングの積み重ねの中で、どのように身体が動けば自転車が上手く速く進んでくれるか、というのを身体が覚えているときは、痛みがあっても自然に身体が動いてくれる。しかし、その痛みが長引くと、その部分をカバーするように身体が動くようになっていく。

その結果、時間が経つにつれて身体全体のバランスが徐々に崩れ、次第に身体が動かなくなるのではないかと思い当たった。

プロとしての経験も豊富になれば、そのようなときの対処の仕方もある程度わかってくる。

身体が治るには時間が必要だ。ただ、プロとなればシード権なども掛かり、長く休めないこともある。

実走する自転車では、大小様々な筋肉がバランスを取りながら動き、そうしたバランスの中で大きな推進力を生みだしていく。怪我の痛みがあるときは、無理な実走は身体のバランスを崩す原因になる。

自分が取り入れたのは、転倒の心配がない固定ローラーでハンドルを高めにして乗るなど、怪我をした部分に負担のかからないフォームで、左右差を意識しながら、安定してトレーニングを行う、という方法だった。怪我明けの実走は怖いものだ。安心できる環境で自転車に乗るということで、徐々に心も慣らしていった。



それが、今はWattbikeという素晴らしい機器がある。

自転車のバランスを取るための筋肉は最小限で動き、自転車を進ますために必要な筋肉だけを意識できる。また転倒の心配もない。

痛みを最小限にするために、サドル前後・高さ、ハンドル前後・高さを動かすことも簡単にできる。

その場合、自転車を速く走らせるために必要な前傾のポジションを取る必要もない。

それでは、速く走らせるために必要な筋肉が上手く使えないのではないか?という疑問もあるだろう。

しかし、そこは、自転車を進ませるために必要な筋力をできるだけ落とさないと考えて欲しい。

また、その場合、大きなワット出す必要はない。FTP下限値の中で、ペダリングの左右バランスを一番重要視してほしい。Polar Viewの中で左右のバランスをパーセントで表示される部分だ。

怪我をしている部分が左右どちらかに偏った場合、この表示に左右差が出るだろう。しかし、目に見えるそれはあまり気にしなくていい。一番大事なのは、その左右差をなくそうとする意識だ。

その意識さえあれば、怪我の治りにしたがって、左右差も徐々になくなってくる。

また、Wattbikeのポジションも怪我をする前に戻っていくだろう。



トレーニングの原理の一つに可逆性というものがある。

トレーニングを中断すると、身体はトレーニングする前に戻ろうとする。

怪我をしたとき、思うように自転車に乗れないとき、今できることで最善は?と、考えたとき、Wattbikeを上手く活用することにも注目して欲しいと思う。


●オフィシャルサイト

・元競輪選手 菊池仁志の自転車道場

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