英国ラグビー最高峰リーグのプレミアシップで2021-2022シーズンを制して最多優勝記録を11に伸ばした、レスター・タイガース。フィジカルパフォーマンス部門を率いる、アレッド・ウォルターズ氏に同チームのワットバイク活用方法などにつき話を伺いました。
同氏は日本開催の2019年ワールドカップでは優勝した、南アフリカ代表を指導していました。
主にワットバイクのデータの有用性とその精度がどのようにエリートスポーツにおける選手強化に役立っているかを話して頂きました。
我々にとって最も有用な測定項目はパワーです。この点においてワットバイクが果たしてくれる役割は非常に大きいと言えます。ラグビー選手にとっては分かりやすく指標にしやすいデータが必要ですが、それこそがパワーです。
私は選手たちがワットバイクに乗ることに安心感を持っています。それは、彼ら自身が既にパワー出力とは何か、それを基に何をすべきかを理解しているからです。
個々のピークパワー・スコアはチーム内でばらつきがあります。日常のルーティンとして、試合から2日後の月曜日に選手たちはピークパワー測定を行いますが、2100ワット超を出す選手が2名います。この数値が他の選手たちの目標にも刺激にもなっています。
パワーはこのようにパフォーマンスを評価する素晴らしい指標です。定期的にチェックすることで選手のモチベーションになっています。
但しこれはワットバイクの測定精度なしには語れません。選手はただ6秒間の全力ペダリングを行うだけですが、我々はそのデータから実に多くの示唆を得ることができます。特に個々の選手がどれだけ回復しているか知ることができますし、メンタルテストの側面もあります。
例えば、バック・ローのJasper Wiese選手。彼は南アフリカ代表(スプリングボクス)の選手ですが、ピークパワー・テストで2100ワット超を記録します。しかし、月曜日のセッションでそれ相当のスコアが出なければ、我々も彼自身も週末の試合からまだ十分に回復していないと判断して対策を講じます。
我々はシーズンを通して多くのテストからデータのモニタリングを行っています。しかし選手たちにはこれをテストと考えずに定期的な進捗チェックと捉えて楽しんでほしいと思っています。選手たちには恐怖の測定日という感覚を植え付けたくありません。その代わりに競争を楽しんでもらいたいと思います。2000ワットに近づくことは誰しも嬉しいことです。そのモチベーションがジムに活気を生みます。
シーズン中はバックスよりもフォワードの選手がワットバイクを多用する傾向が見られます。怪我のリスクを回避しながら高強度トレーニングを行うために優れたツールだからです。
データはそれを見て何かを直接的に施すというよりもモニタリング目的に使っています。
ピッチ上では動作の反復性がカギになりますが、ワットバイクは反復性の評価に有用です。ワットバイク上で反復性に難がある場合、ピッチ上でも同じことが起きます。
ピークパワーのことを多く話してきましたが、その他に、200m、500m、1000mのトライアルも行っています。これらもラグビーのパフォーマンスの決定要因になります。ワットバイクは時間的制約があるなかでハードワークを効果的、効率的に行いたいときに有効なツールです。
スプリングボクス時代にもワットバイクを使っていたので、レスターに来た時にもワットバイクの有用性を理解していました。そのため、当時ジムにあったものに加えてすぐに追加台数を導入しました。
私は正直なところ、ワットバイクが置かれていないトレーニング施設を見ると真剣にトレーニングと向き合っているとは思えません。
ワットバイクはコロナによるロックダウン中に選手たちのトレーニングを助けました。現在はクラブジムでオフフィート・トレーニングの重要なパートを占めています。選手たちはワットバイク無しで1週間を過ごすことには違和感を持つでしょう。
基本的にデータは向上を続けるために重要ですが、それこそがワットバイクの真価です。ワットバイクのデータは即時に見ることができて分かりやすいです。GPSや他のモニタリングシステムとは違うところです。
個々にはワットバイクを好きな選手も嫌いな選手もいるでしょう。どんなことでも得意なことは好きになるし、その逆もあります。しかし、確かなことはすべての選手がワットバイクをリスペクトしています。ワットバイクでないと、このレベルのデータは得られません。私はこのバイクを信用しています。我々のクラブに欠かせないものであり、私が仕事をする如何なる環境においても必要なものです。
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