前回のコラムでは、パワーの出し方が競技を行う上でとても大事になるということについて書いた。
今回は、フォームについて書いてみたいと思う。
自転車を進ませるために必要な動力は競技者の身体が生み出す。
競技者自身の能力が上がれば競技力も上がってくることは言うまでもないが、その能力に、もう一つ工夫を凝らすことで、競技力を飛躍させることができる。
その工夫とは、競技者が自転車に乗車するフォームだ。
自転車は、身体の力を推進力として入力するために大きな役割を担うペダル、体幹を支えるサドル、自転車の操作上とても重要な役割を担うハンドル、この三点で競技者の身体を支えている。
この三点の位置関係は、ペダルに伝わる力、それを継続して出力することに大きく影響する。
実走となれば、自転車の最大の抵抗となる風圧にも大きく影響する。
より効率的に自転車を進ませるためには、ペダルひと踏みで出るパワーを上げるだけではなく、連続した動作の中で滑らかに身体全体を使いながら、コンパクトに身体を折りたたんだ状態で長い時間パワーを維持する必要がある。それを可能にするのが、乗車フォームだ。
そのフォームを維持するためには、体幹の強さ、コンパクトなフォームのなかで、できるだけ身体を大きく使うための柔軟性が必要になる。三点の位置関係と、体幹や、柔軟性といった競技者の身体のバランスによって導き出されるのが、最善のフォームだ。
自転車を一つの道具として考えれば、長い時間その道具に触ることで、道具を自在に扱うための技術が養われる。そして、最善のフォームで自転車に乗ることで、それを維持するために必要な筋肉群が自然と強化されていく。
今の位置関係で、どの筋肉群が使われているか、それによって見えてくる選手の将来像もある。
今踏めるギアで結果を出すためだけのフォームは、この先に必要な筋肉群が使われていないこともある。
長く競技を続けるために、先々を見据えることは、とても大切だ。
自分が指導している選手の室内トレーニングには、Wattbikeと3本ローラーを組み合わせている。
Wattbikeで継続して安定したパワーを出すこと、そして、どんな状況でも最善のペダリングができるためのトレーニングを行い、3本ローラーで自転車をコントロールしながら自転車を進ませるための理想的な身体の使い方とペダリングを習得できるように考えている。
最善のフォームを作り上げるには様々なトレーニングのバランスが必要不可欠になる。
そのバランスは選手によっても変わってくるし、同じ選手であっても成長度合いによって変化する。
身体は常に変化して、その時々で、最善のフォームも変化する。
理想のフォームに近づくために、今必要なのが最善のフォームであり、必要なトレーニングは常に変化する。
それを見極めるのがコーチの役割だと思っている。
Vol.5でも、フォームについて触れているので、是非参照して欲しい。
http://wattcycling.jp/info/664/
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・元競輪選手 菊池仁志の自転車道場
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