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【仲澤春香 ガールズケイリン選手候補生  ~ 元ボート競技選手の再起】

2023年05月19日 更新

日本競輪選手養成所は1月19日に第126回(女子)選手候補生入所試験合格者20名を発表した。合格者たちは来年のガールズケイリン・デビューを目指してこの春から同所(静岡県伊豆市)にて1年近くにわたる厳しい訓練に入る。

この20名の中に意外な名前が含まれていた。仲澤春香 21才。数年前に将来を嘱望されていたボート競技選手だ。

仲澤は高校時代、ボート日本代表として世界ジュニア選手権に2年連続出場、ダブルスカルで8位と好成績を収めた。国内大会では全国高校選抜大会2年連続優勝。類まれなる体力、技術、そしてリーダーシップを兼ね備えた仲澤を将来の日本ボート界を背負って立つ逸材と評価する声が多くあった。

(2019年2月、オーストラリアでのレース。一番手前のストローク漕手が仲澤春香さん)

福井県立若狭高校を卒業後はボートの強豪、関西電力に進んだが、ここ数年、ボート競技の世界で仲澤春香の名前を聞くことはなくなっていた。

昨年、復活10周年を祝ったガールズケイリンは実力、人気ともに着実にレベルアップを重ねて、日本女子プロスポーツの中心的な存在へ駆け上がろうとしている。

その世界へ突如として現れたスポーツタレント、仲澤春香さんに、その経緯、動機などを聞くために日本競輪選手養成所を訪れた。日本競輪選手養成所、公益財団法人JKAのご理解の下、仲澤さんは快くインタビューに応じてくれた。

- ジュニア時代にボート選手として世界を舞台に活躍していた仲澤さんが今こうして競輪選手養成所でガールズケイリン選手を目指す状況に至った経緯を教えて頂けますか?

「ボート選手としてU19からU23カテゴリーに上がった1年目に心身の調子を崩してしまいました。きっかけとしてはコーチから脚と肘の動きを改善するように指導をされてそれに取り組んでいるうちに元々の動きも分からなくなってしまいました。イップスの状態です。U19のときはずっとトップにいましたのでU23でも日本代表に入らないといけないと自分で自分を追い込んでしまいました。精神的に他の選手と一緒にチームボートに乗って漕げる状態ではなくなりました。」

「ボート選手として活躍することを期待されて関西電力に入りました。しかし、イップスから抜けられず、期待に応えること、責任を果たすことができない。ボートを頑張りたい気持ちはあるのにトレーニングが思うようにできない。色々と悩んだ末、入社から1年10か月後の昨年2月にボートをやめて退社することにしました。その先のことは何も決めていませんでした。」

- 競輪との出会いはその後ですか?

「退社後、親のアドバイスなども聞きながら進路を探していました。そんな時に高校時代の顧問の先生から福井の自転車強豪高校の先生を紹介されました。そのときに競輪のことは全く知りませんでした。お話を聞いてまずはその高校に行って練習をさせて頂き2週間後にはガールズケイリンの道に進むことを決めてそれに適した環境に引っ越しをしました。」

- ボートをやめて1か月以内の早い決断ですね。迷いはありませんでしたか?

「初めて競技用自転車に乗った時は怖かったです。ただ、自分の魂が生きていました。ボートをやめて物足りなさを感じていました。自分はこれをやるしかないと思いました。」

© 日本競輪選手養成所

- 本格的に乗り始めたのが3月、日本競輪選手養成所の1次試験が10月ですから半年強のトレーニングで合格したことになります。どのようなトレーニングをしていたのですか?

「バンクに入ることもありましたが、それより多くワットバイクをしました。20分のビルドアップメニューや6秒max、1分オフを10本×2セットなどです。師匠からは8月までに実走タイムが出なければ適性試験でいこうと言われていましたが、タイムが出ましたので技能試験を受けました。」

- 自転車の初心者がそのような短期間で実走タイム測定の技能試験で合格できた要因はどこにあると考えていますか?

「ボート選手のときから常にトレーニングの意味を考えて行っていました。自転車についても指導者にメニューの意図を聞きながら行いました。このような進め方がよかったように思います。」

- ボートをしていたことが自転車に活きていることはありますか?

「我慢する力です。これはボートと共通の部分です。また、長い距離をもがけることもボートで培ったものだと思います。」

- 逆にボートと違うと感じるところはありますか?

「瞬間的に高出力を出すところが難しいと感じています。」

- 養成所に入って1か月になりますが、今のところの感想は如何でしょうか?

「毎日バンクで乗れる幸せを感じています。また、技術的なことをたくさん教えて頂けることも本当に有難いです。食事は出して頂けるし風呂掃除の必要もないし快適です。全体として充実した毎日を送れています。」

- 将来はどのような選手になりたいですか?

「ガールズグランプリを獲れるような選手になりたいと思います。」

© 日本競輪選手養成所

- ガールズケイリンは素晴らしい世界でガールズケイリン選手は夢のある仕事だと思います。仲澤さんが選手に向けての一歩を踏み出せたこと、本当によかったと思います。仲澤さんと同じような境遇に陥った選手がいれば励みにもなるだろうとも思います。

「ボート競技のトップ選手たちは色々なプレシャーを感じながらしんどい中でやっています。実業団選手は会社の負担の下に競技ができているわけですから、それは必然とも言えますがイップスになる選手も少なくありません。色々と経験してきたことを活かして新しい道で頑張っていきたいと思います。」

仲澤春香さんの言葉、表情からは挫折をした人間が立ち上がり再び走り始めた強さを感じた。新たに切り拓く道も決して平たんではないが覚悟を決めて挑戦を始めた姿にエールを送りたい。

ボート競技の世界においても才能豊かな選手が静かに消え忘れ去られていく事例をいくつか見てきた。仲澤春香さんの今後のガールズケイリン選手としての活躍が専門競技で頑張りながら何かの理由で挫折した選手、悩める選手たちの道標になれば彼女の挑戦に大きな意義を見出すことができるだろう。

取材協力:公益財団法人JKA

   日本競輪選手養成所

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