前回に続き脳梗塞後のリハビリに励まれている男性についてです。最初の1か月間はCRFプログラムには入らずに心拍数を管理して右脚の出力を意識するペダリング練習(5分間50rpmを2~3セット)のみを行い、その後、Health Assesment Submax Test→「Health & Fitness Plans」に入りました。
初回のテスト結果はVO2Maxが28.04ml/kg/min、CRFスコアが10%で、心肺フィットネス初心者向けのBeginner1からスタートしました。1か月間50rpmでのペダリングのみだったため気づきませんでしたが、80rpm以上の高回転がベースとなっているこのワークアウトは上半身のバランスを取ること、下半身との連動が相当難しいようでした。Beginner1を開始した当初は身体がガチガチに強張り、下肢へ上手く力が伝えられない、力が常に入っている、そんなように見られました。回転数が上がるとその分、脳からの指令も高度となるため、徐々に慣れていく必要があると感じました。
身体の動きがこのような状態だったため、「すぐに高回転のワークアウトを行っていって良いのだろうか。」と不安もありましたが、心肺フィットネスの向上に意欲を持たれていたこと、ご本人の主観的な強度も問題ないとのことから、セッションは①低回転での右脚の出力を高めるためのペダリング練習、②心肺フィットネス向上のためのBeginner1のワークアウト、の2本立てで進めることとしました。
不安要素となっていた高回転でのペダリングですが、5回目のセッションあたりから身体の適応が見られるようになりました。トレーニング過程において、「右が言うことを聞かない、悔しい。」「右が踏み込むときにカクンカクンとなる、意識しないと円運動にならない。」などと教えてくださることもあり、もどかしさを感じることも多かったと思います。しかし、どうすれば良くなるのか、できるようになるのか、を常に考えながら取り組まれるご本人の前向きな姿勢により、現在、約3か月が経過しましたが、明らかに高回転でのペダリング安定してきていることが見て分かります。ハンドルにしがみつくことがなくなり、上体が安定して下肢をスムーズに動かしてペダリングができるようになってきています。また回転数が上がってもお尻が跳ねることもなくなってきました。
姿勢や動きの改善とともに、心肺フィットネスの方も着実に向上しています。先日、2回目のテストを行いましたが、Vo2maxは31.41ml/kg/minと3か月で約3.4ポイント増加しました。米国心臓病学会が発表した、「VO2Max(ml/kg/分)が1ポイント増えると健康寿命は45日延伸する」というエビデンスもあるように、今回の結果は喜ばしいものとなりました。
また、現在Beginner1のワークアウトを再度行っていますが、その内容は2回目のテスト以前に行っていたものよりも負荷がアップしています。しかし心拍数は前回の時よりも抑えられており、この点でもCRFプログラムの効果を実感しています。
今後も少しずつ時間を伸ばし、強度を上げ、無理なく効果的に心肺フィットネス向上を図ることでリハビリの一助となればと嬉しいです。
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Wattbikeマスタートレーナー
合田 祐美子
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