第104回全国高校ラグビー大会の福岡県予選は11月9日に決勝が行われ、東福岡高校が80-5 で筑紫高校に快勝し、35回目の全国大会出場を決めた。
今年の東福岡は3月に熊谷で行われた全国選抜大会で1回戦敗退を喫し、続く6月の九州大会では優勝を逃し、さらに8月に菅平で行われた、全国7人制大会では予選リーグ最下位と苦しい戦いを強いられていた。
そのような中で、この決勝戦の快勝は東福岡の復調を印象付けるとともに来月開幕する全国大会(花園)での活躍を期待させるに十分な内容であった。藤田雄一郎監督は、試合内容に課題があると言いながらも選手たちの集中力を評価した。
東福岡高校は2022年からワットバイクを積極的にトレーニングに採り入れている。
導入当初はレッグスピード(脚の動作速度)の改善にフォーカスをした。
これは、①ペダリング運動はランニングよりも下肢の速い動きを誘発できる。②ペダリング運動は着地衝撃を伴わないため、ランニングに比べて怪我のリスクが圧倒的に低い。というポイントに着目してのもので、特に身体が発達段階にある高校生選手には有効であろうと考えた。
福島千里選手や寺田明日香選手といった一流スプリンターを指導した、陸上競技の名指導者、中村宏之氏も著書「日本人が五輪100mの決勝に立つ日」の中で次のように書いている。「単純に言えば、速く走るために必要なのは、「速く脚を動かすこと」だ。(中略)狭いところで速く脚を動かすトレーニングをすると、神経系が動き出すようになり、これにより筋肉系が動き出すようになる。」
具体的には、3秒~10/20秒の領域でスプリントを繰り返すメニューであるが、特に3秒は反応速さの向上を目的に行っている。選手の最大回転数が上がることに比例して、試合中のピーク走速度が上がることがデータを以って確認されてきた。同様にバイク上での力の立ち上がり速度の向上とともにランニングの動き出し早さが向上することも確認できている。
余談であるが、盛り上がることで有名な東福岡高校の体育祭のメインイベント、クラブ対抗リレーで、ラグビー部はインターハイのマイルリレーで優勝した陸上競技部に肉薄して、その脚の回転速さに陸上部員たちが驚いたというエピソードもある。
その後は、ワットバイクを使って有酸素能力や有酸素性、無酸素性パワー(持続)の向上にも取り組んでいる。時間的制約の多い高校生選手に対しては、如何に時間効率よく効果的なトレーニングを施すかが考えどころになる。ここでもペダリング運動はランニングに対して、より短い時間で、より高い強度の運動をより安全な状態で行うことができる、という特長が存分に活かされている。
現在は10~20分のビルドアップや短時間の高強度インターバルを各選手に適した負荷設定で行うことで効果の最大化を狙っている。
また、ワットバイクの3分間テストを用いて、2分30秒を100回転固定、残り30秒を最大努力するプロトコルを行うことにより下肢の筋肥大にも成功させた。
ワットバイクのデータによって、選手たちのフィジカル向上が数値として示されて、更にそれが試合中のパフォーマンスの向上につながっていることが確認されている。
試行錯誤を重ねながら、東福岡高校ラグビーフットボール部のワットバイク活用方法は進化を続けている。何よりも選手たちが合宿、遠征、そして試合前のアップにワットバイクを欲しているという事実が、このチームにとってワットバイクが欠かせないトレーニングツールであることの証左である。
第104回全国高校ラグビー大会は12月27日に開幕する。全国の強豪を相手に東福岡高校フィフティーンはどのような活躍を見せるのか。大会まであと1か月、残されたその期間にも彼らは成長を続けていくことだろう。
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