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【スケート選手は何故バイクトレーニングを行うのか? 清水宏保が考えるバイクトレーニングの効用 ③】

2025年03月10日 更新

本シリーズ最終回となる今回の記事では清水宏保さんに、スケート選手がバイクトレーニングから得られる効用のほかに選手に求められる回復能力や世界トップ選手について話して頂いた。


スケート選手がペダリング運動から得られる効用について。

「バイクのペダリングストロークの中で蹴るというか押すところはスケートの動作と同じタイミングです。太腿の強化にはよいです。実際、太腿の強化という括りでは、ウエイトトレーニング、ジャンプ、バイクとありますが、ウエイトとなると筋肥大をし過ぎてしまうリスクがあります。また、「乳酸」にはつながりません。回復能力を高めるわけでもない。その点、ペダリングは常に血流を促して、ポンピングがありながら連動した動きができます。そして体幹まわりも使って漕げる、中殿筋、殿筋も使いながら。動きとして単関節なようで実はすごく色んな動きがそこに要素として含まれるし、神経も鍛えられるじゃないですか。反応としてスパーンと巻き上げて、漕いで引いて漕いで、更には腹筋、背筋、上半身も使います。」

©清水宏保


- どのようなイメージでバイクを漕いでいたか?

「ペダリング運動のフォームはスケートに非常によく似ています。特に前傾姿勢のときに似ています。前傾姿勢の状態で太腿だけを使う、ハンドルがあるかないかの違いだけです。自分はペダリングの際にフォームをとても気にしていました。常にスケートをイメージして漕がないとダメです。どの種目の選手が何のトレーニングをするときもそうだと思いますが、例えばウエイトをするときも専門競技でのパフォーマンスアップにつながるようなイメージをしていくべきです。バイクトレーニングももちろんです。」


‐ スケート短距離選手のピーク年齢はどのくらいか?

「20代前半から26才くらいかと思います。このへんがトレーニングで追い込める時期です。28になるときついかな。反応も鈍くなるし、だんだん年齢が上がると追い込めなくなってきます。高い乳酸値を出すことにどんなに集中しても出せない、昔やっていた同じメニューでも一発の能力、一発の質が落ちます。どんなに調整して、どんなに追い込むぞ!とやっても、いざバーンと、距離、時間を延ばしたとしても、「あれ?全然追い込めない」という感じですね。そのへんからレースのパフォーマンスも変わってきます。そこから色々な試行錯誤をするのですが、脂肪がついてくるのと、筋肉の質が変わります。同じトレーニングをしても筋肉が太くなってくる。カモシカのような筋肉ではなく、割とぼてっとした感じになります。筋肉の太過ぎはよくないです。ある程度の筋肥大があっても締まるところは締まってほしいです。それが食事でコントロールするといったレベルではなく、筋繊維の話になってきますので。もちろん最近は30代前半でもパフォーマンスを出せるようになってきていますが、アスリート全般として感覚的なピークはそうではないかと思います。オリンピックで戦えている選手は大体、そのくらいの年齢だと思います。私の感じ方ですが。

©清水宏保


- 回復能力とピーキングについて

「回復能力が高ければ高いほどトレーニングで出し切ることができます。逆に言うと、トレーニングで出し切った後、何日間で回復できるのか?が大事になるわけです。ワールドカップで転戦しているときや1週間おきにレースがあるときなら中5日で回復できるのかどうかでレースのパフォーマンスは変わってきます。ちょうど今、日本代表の選手たちは2週間後の大きなレースに向けてかなり追い込んだトレーニングをしています。こういうトレーニングは言ってみればハイリスク、ハイリターンのようなところがあって、例えば本当にちゃんとしたトレーニングを積んできた選手なら、追い込んで、ぱっと回復できてピーキングを作れます。しかしベースとしてちゃんとしたトレーニングができていない選手がそれをやってしまうと、ただ疲れただけで終わってしまいます。超回復もないし。回復能力が高いとピーキングを簡単に作りやすい体つくりができるようになります。ピーキング、ピーキングと皆よく言いますが、それはただそこに調子を合わせるということではなく、ベースとして色々なトレーニングをやってハイリスク、ハイリターンのメリハリの出来る人を作り上げないといけないと思っています。先行投資ではないですけど。」


- 高木美帆選手の強さについて。何故あんなに強いのか?

「テクニックが優れていますし考え方がストイック、自分の環境に浮かれておらず、テクニックやトレーニングの向上に貪欲です。常に一歩先に追い求める理想像が常にある、という感じを受けます。結果云々ではなく内容を探求しているようにも見えます。だから彼女の中にはずっとゴールがないし作らないのだと思います。それでコメントもある意味、マイナス思考のものです。よかった、とはあまり言わずに常に課題提起のインタビューで長くなってしまいがちです(笑)。誰よりも課題が多いです。課題をみつけながら、フィードバックしながらレースをしているように思います。情報量が多いのです。自分の中の技術的、感覚的なデータを取ることができるのではないかと思います。ゴールしてタイムが出たとき、出なかったときに、何でよかったのか、または何で悪かったのかがわからないようでは成長しません。滑りながらでもフィードバックができる、そしてそのときの状況や氷によって滑りを変えることができる。この辺が強さの源ではないかと思います。」

©清水宏保



- バイクトレーニングをスケートのパフォーマンスに最大限生かすための提言

「バイクトレーニングではもの凄く強く、追い込める、しかしスケートはそうでもないという選手が結構います。逆もあります。この点を極力近い状態にもっていければ、ものすごい相乗効果が生まれてよい状況が作れることは確かです。ダメだと思ってそこで諦めるのではなく、突き詰めていけるトレーニングメニューが必要ですし、また、先ほどお話ししましたようにバイクを漕ぐときにスケートに近いイメージを持つといったことが大事になるのかもしれません。これはバイクトレーニングだけではなく、ウエイトにしても同じです。ウエイトがすごく強ければスケートが速いかと言えばそうではない。でも、そこができないとダメだと思うのと同時に、そこにテクニックを連動させる神経系のトレーニングを考えることも必要になってくるのではないかと思います。」

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